前回、絶縁システムで使用される高分子樹脂は、EIM(ELECTRICAL INSULATING MATERIAL)とNIM(NON-ELECTRICAL INSULATING MATERIALS)の2つに分類されることを説明いたしました。今回はこれらの評価方法について説明いたします。絶縁システムを新規作成する場合や既存システムを修正する場合は以下のチャートに基づいて評価方法が決定します。
図1 試験方法決定のためのフローチャート
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図1 試験方法決定のためのフローチャート |
1.EIMの評価方法-長期熱劣化試験
新規絶縁システムの登録を行う場合や、既存のシステムに登録されていないEIMの登録を行う場合、EIMとマグネットワイヤーを専用の治具に組み込んでサンプル(下記に示すGPM。下記図2参照)を準備し、複数の温度を用いて各温度毎に10個のサンプルを投入して長期熱劣化評価を行います。サンプルは定期的に取り出して振動、冷却、加湿を行った後に耐電圧試験を実施します。この工程を凝り返し、10個すべてのサンプルが耐圧試験において不合格となった時間を寿命とし、各評価温度の寿命を求めます。最低3温度以上の温度を用いて寿命を求めることが要求されています。EIMを評価する本試験は長期熱劣化試験と呼ばれています。
1-1.GPM
評価サンプルは、UL1446で規定された専用治具にコイルとEIMを組み込んで製作します。この構造のサンプルを用いて評価を実施すれば、登録した絶縁システムを様々な形状の製品に、適用することが出来ます。このように、汎用的に製品に適用できるモデルのため、GPM(General Purpus Model)と呼ばれています。長期熱劣化試験には実際のモーター、トランスなどの製品を用いることもできますが、この場合、評価の結果登録された絶縁システムは、評価に用いた製品にしか適用することが出来ません。 |
GPMに組み込むコイルは2本のマグネットワイヤーを一緒に巻き付けて製作したものを2個用意します。 |
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図2 コイル |
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評価サンプルは、UL1446で規定された専用治具にコイルとEIMを組み込んで製作します。この構造のサンプルを用いて評価を実施すれば、登録した絶縁システムを様々な形状の製品に、適用することが出来ます。このように、汎用的に製品に適用できるモデルのため、GPM(General Purpus Model)と呼ばれています。長期熱劣化試験には実際のモーター、トランスなどの製品を用いることもできますが、この場合、評価の結果登録された絶縁システムは、評価に用いた製品にしか適用することが出来ません。 |
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図3 GPMの構成 |
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このようにして製作したGPMを1温度あたり10個用意します。 |
1-2.長期熱劣化試験の概要
長期熱劣化試験に用いる温度に対しては以下の要求があります。 |
- エージング温度の間隔は10℃以上開けなければならない。
- 最高エージング温度における寿命は100時間以上であること。
- 最低エージング温度における寿命は5000時間以上であること。
- エージングに用いる温度は最低3つの温度が必要。
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上記を満足する温度を選定してエージングを行い、定期的にサンプルを取り出して、振動、冷却、加湿を行った後、耐電圧試験を実施します。冷却や加湿の条件は、絶縁システムが適用される環境が屋内使用か屋外使用かにより決定します。 |
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図4 長期熱劣化試験での評価項目 |
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選定した各温度において上記サイクルを繰り返し、耐電圧試験で10個すべてのGPMが絶縁破壊するエージング時間を求め、各温度の寿命を決定します。 |
1-3.温度クラス算出
評価温度と寿命例
エージング温度 |
220℃ |
200℃ |
180℃ |
寿命 |
181時間 |
1523時間 |
5949時間 |
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図5 温度クラスの決定 |
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各評価温度におけるサンプルの寿命が得られたら、横軸に絶対温度の逆数、縦軸に時間の対数としたグラフにプロットし、アレニウス式を算出します。 |
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アレニウス式については高分子材料技術講座|UL746B ③の中で解説していますのでそちらをご参照ください。 |
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ULが所有している絶縁システム(コントロールシステム)の相間時間を用いて、得られたアレニウス式より相間時間における温度を算出します。アレニウス式より算出された温度がそのまま登録されるわけではありません。下記の表に基づき、算出された温度が当てはまる範囲に応じて温度クラスが決定されます。 |
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表-1 システムクラスと温度範囲
クラス |
システムクラス記号 |
温度範囲(℃) |
105 |
A |
105=A |
120 |
E |
120≦E<130 |
130 |
B |
130≦B<155 |
155 |
F |
155≦F<180 |
180 |
H |
180≦H<200 |
200 |
N |
200≦N<220 |
220 |
R |
220≦R<240 |
240 |
S |
240=S |
>240 |
C |
240<C |
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2.NIMの評価方法-シールドチューブ試験
絶縁システムにNIMを追加する場合あるいは登録されているNIMを変更する場合には、シールドチューブ試験と呼ばれる短期的な評価を行います。NIMは絶縁目的で使用されないコンポーネントなのでフルサーマルエージングの様に長期的な絶縁性能を確認する必要がありません。シールドチューブ試験はNIMから発生する分解ガスがマグネットワイヤーに悪影響を与えるかどうか確認する試験です。
2-1.投入コンポーネントとシールドチューブ
シールドチューブ試験は2本撚りにしたマグネットワイヤー(ツイストペア)とともに絶縁システムに登録するコンポーネントをガラスチューブに投入します。シート状のものは1インチ角、紐やタイコードなどは1インチの長さにカットして投入します。チューブは長期熱劣化試験を実施した際に用いたコンポーネントを入れたチューブ(リファレンスチューブ)と、リファレンスチューブに投入したコンポーネントに加えて、追加したいNIMを入れたチューブ(サブスティチュートチューブ)を用意します。 |
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図6 シールドチューブ試験のサンプル |
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エージングはリファレンスシステムが認証されている温度クラス+25℃の温度を用いて、336時間のエージングを実施します。サブスティチュートチューブは追加投入するNIMの種類を変えて複数用意して評価することも可能です。 |
2-2.判定方法
エージングを336時間実施した後、リファレンスチューブおよびサブスティチュートチューブに投入していたツイストペアの絶縁破壊試験を実施します。 それぞれのチューブに投入したツイストペアの絶縁破壊電圧を測定し、サブスティチュートチューブに投入したツイストペアの絶縁破壊値(平均値)がリファレンスチューブのツイストペアの絶縁破壊値(平均値)の50%以上となれば合格です。 |
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掲載スケジュール
UL746B 長期熱劣化試験
回数 |
タイトル |
掲載予定 |
1回目 |
「RTI(Relative Thermal Index):相対温度インデックスとは?」 |
掲載済 |
2回目 |
「各特性の評価方法」 |
掲載済 |
3回目 |
「RTIの算出方法」 |
掲載済 |
4回目 |
「4温度評価以外の評価方法」 |
2023-12 |
5回目 |
「評価を実施する前の事前準備など」 |
2024-02 |
UL1446 絶縁システムの評価
回数 |
タイトル |
掲載予定 |
1回目 |
「Insulation System:絶縁システムとは?」 |
掲載済 |
2回目 |
「コンポーネント(構成材料)について」 |
掲載済 |
3回目 |
「絶縁システムの評価方法」 |
掲載済 |
4回目 |
「コンポーネントに対する注意点」 |
2024-01 |
5回目 |
「評価を実施する前の事前準備など」 |
2024-03 |
お問い合わせ先
担当:堀水 真
TEL:0551-42-5061