プラスチック・PWB評価試験

高分子材料UL技術講座 | UL1446 絶縁システム(Insulation System) ①

電気製品に使用される絶縁材料の多くは高分子材料で構成されています。これらの材料は用途に応じて難燃性・機械特性・電気特性・耐熱性などの評価が実施されています。更に、マグネットワイヤーが使用されている製品規格(下記2項参照)の中で、材料単体の特性の要求以外に絶縁システムの取得を要求している規格があります。UL規格におけるUL1446は、モータ-、トランス、スイッチなど多くの製品のUL規格で参照されているこの絶縁システムに関する規格です。UL1446では、それぞれの製品における評価方法が個別に記載されているわけではありません。このため、絶縁システム取得を検討されている方から、「どのように評価を進めたら良いか分からない」、と言った声をよく耳にします。今回から全5回で絶縁システムに関しての考え方および評価方法についてシリーズで解説いたします。
 

1.絶縁システム(Insulation System)とは?

『絶縁システム(Insulation System )とは何か?』 このようなご質問を受けることがあります。 UL1446における絶縁システムとは「電気機器に使用する導電性部品と絶縁材料の2つ以上のコンポーネント(材料)の組み合わせ」、と規定されています。 分かりづらい表現ですが、マグネットワイヤーとボビンなどの絶縁材料の組み合わせと言えば分かりやすいのではないでしょうか。 UL1446の中ではこれらの材料を組み合わせた状態で絶縁性能を評価する手順について規定しています。 

絶縁システム
コイルと絶縁材料で構成されたトランス

2.製品要求例

製品規格の中でUL1446に基づく温度クラスを参照している規格は多数あり、モーター、トランス、オーディオ機器など多岐にわたります。
表-1 UL1446を参照している製品規格の例
規格 対象
UL62368-1 オーディオ、ビデオ機器
UL506 トランス
UL1004 モーター
 

3.なぜ「組み合わせでの評価」が必要なのか?

マグネットワイヤー、絶縁材料、ワニスなどは個別に製品の耐熱温度を表す温度定格を取得しています。それでは、それぞれ温度定格を取得しているので、それらを組み合わせた製品は耐熱的に問題ないのでしょうか? トランスやモーターなどの電気製品は作動中に高温になります。高分子材料は温度が高くなると分解ガスが発生し、これらの分解ガスが、製品に使用している他の高分子材料に対して悪影響を与える場合があります。

絶縁システム 絶縁システム
分解ガスの影響でエナメル被覆が剥離した
マグネットワイヤー

個別の材料がどんなに高い温度定格を持ったものを組み合わせて製品を製作したとしても、それぞれの材料が発する分解ガスの相互作用を確認しなければ、実際の使用状況における絶縁性能が確保できているとは言えません。 このような背景があるため、それぞれ温度定格を認定された材料を組み合わせて評価し、絶縁システムとしての温度定格を取得する必要があるのです。

◎UL1446の解説本 『UL1446 絶縁システム スーパー解説と和訳』

絶縁システムが適用される基本構造や、絶縁システムに適用される試験などについて詳細にわかりやすく解説している日本で唯一のUL1446の解説書です。当解説書では、基本となる絶縁システムの評価方法、既存の絶縁システムを利用し自社で使用する材料を追加したうえ評価する方法など、絶縁システム認定のノウハウが詰まっております。

価格およびご購入方法についてはこちらのページをご参照ください。

絶縁システム

掲載スケジュール
UL746B 長期熱劣化試験

回数 タイトル 掲載予定
1回目 「RTI(Relative Thermal Index):相対温度インデックスとは?」 掲載済
2回目 「各特性の評価方法」 掲載済
3回目 「RTIの算出方法」 掲載済
4回目 「4温度評価以外の評価方法」 2023-12
5回目 「評価を実施する前の事前準備など」 2024-02
UL1446 絶縁システムの評価 

 

回数 タイトル 掲載予定
1回目 「Insulation System:絶縁システムとは?」 掲載済
2回目 「コンポーネント(構成材料)について」 掲載済
3回目 「絶縁システムの評価方法」 2023-11
4回目 「コンポーネントに対する注意点」 2024-01
5回目 「評価を実施する前の事前準備など」 2024-03
お問い合わせ先
担当:堀水 真
TEL:0551-42-5061
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