プラスチック・PWB評価試験

高分子材料UL技術講座 | UL746B(IEC60216)長期熱劣化試験(RTIおよびTI)①

これまでにも、お客様より「RTIとは?」、「どうやって取得するのか?」と言ったお問い合わせを数多く頂いております。 弊社ではミニセミナーの実施や規格解説書の販売を行っており、詳細な情報提供を行ってまいりましたが、数多くいただいているお問い合わせを基にUL746BおよびIEC60216に基づくRTIおよびTIについて5回に亘り概要を紹介したいと思います。

1.RTI(Relative Thermal Index):相対温度インデックスとは?

「RTIの取得をお客様からリクエストされたのだが、何をどうしたらよいか?」。 このようなお問い合わせを頻繁に耳にします。 RTIとはUL746Bで規定されている、Relative Thermal Indexの頭文字を取ったものですが、まずはThermal Indexの説明を行いたいと思います。 これは一般温度インデックスとも呼ばれ、一般科学材料名称ごとに割り当てられています。 UL746Bでは過去の使用実績、評価実績により長期熱劣化試験を行わなくても認められる温度インデックスがUL746B 表 7.1に規定されています。
表-1 UL746B 表7.1抜粋
材料名 ISOでの表記 一般温度インデックス(℃)
ポリアミド PA 65
ポリカーボネート PC 80
ポリエチレンテレフタレート -
成形樹脂
フィルム(最大0.25mm)
PET 75
PET 105

この一般温度インデックスに対し、長期熱劣化試験を実施してこれよりも高い温度インデックスが得られた場合、評価で得られた高い温度インデックスを認定することが可能です。

表-2 ポリカーボネートのUL認定例
Polycarbonate (PC)
Material Dsg Color Min.

Thk

mm

Flame

Class

RTI
Elec Mech
Imp Str
CTX123 ALL 0.75 V-1 120 120 120
1.5 V-1 120 120 120
3.0 V-1 120 120 120
上記表1に示すようにポリカーボネートの一般温度インデックスは「80℃」であるのに対し、上記認定例では「120℃」認定で認定されています。 このことからこの材料は長期熱劣化試験を実施して一般温度定格よりも高い温度定格を取得認定していることが判ります。 温度インデックスに「Relative」と付くのは、UL746Bでは評価の際に、過去に評価実績のある既知の材料と比較することが規定されているためです。 これに対し、IEC60216の中で規定されるTIはTemperature Indexの頭文字を取ったものです。 こちらも温度インデックスを指し、長期熱劣化試験を実施する必要があります。 類似した評価方法ですが、寿命の算出方法、温度定格の算出方法などはUL746Bと異なっています。

2.製品要求例

UL認定品として製造される製品は、個別のUL規格に基づいて認定され
ています。これ等の最終製品のUL規格では、製品に使用されている
高分子樹脂に対してRTIの要求が規定されていることがあります。
多くの場合、製品の実際の最高使用温度(MOT:Maximum Operation
Temperature)よりも高いRTIを持つことが要求されています。
例えばUL8750-LED照明の規格の中で「封止材の最高使用温度は
RTIを超えてはならない」、と規定されています。
逆に言えば封止材に用いる高分子材料は最高使用温度以上の
RTIを取得している材料しか使用できないことになります。
より高いRTIを取得していれば、適用できる製品の幅が広がるため、
より高いRTIを取得することは材料の販売上、とても重要となると言えます。

長期熱劣化試験(RTIおよびTI)
図-1 LED基板

基本となる4ポイント評価をはじめ評価方法の詳細や、弊社での評価時
の苦労話も含め詳細に解説しています。 詳しくは解説書をご覧にな
るかお問い合わせをお願いいたします。 価格およびご購入方法につ
いてはこちらのページをご参照ください。

UL746Bに基づく長期熱劣化試験解説書

掲載スケジュール
UL746B 長期熱劣化試験

回数 タイトル 掲載予定
1回目 「RTI(Relative Thermal Index):相対温度インデックスとは?」 掲載済
2回目 「各特性の評価方法」 掲載済
3回目 「RTIの算出方法」 2023-10
4回目 「4温度評価以外の評価方法」 2023-12
5回目 「評価を実施する前の事前準備など」 2024-02
UL1446 絶縁システムの評価

回数 タイトル 掲載予定
1回目 「Insulation System:絶縁システムとは?」 掲載済
2回目 「コンポーネント(構成材料)について」 掲載済
3回目 「絶縁システムの評価方法」 2023-11
4回目 「コンポーネントに対する注意点」 2024-01
5回目 「評価を実施する前の事前準備など」 2024-03
お問い合わせ先
担当:堀水 真
TEL:0551-42-5061
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