■ IEC62620における直流内部抵抗測定
IEC62620では、下記のように電池の放電タイプが設定されています。
S:極低率長時間放電タイプ
E:低率長時間放電タイプ
M:中率中時間放電タイプ
H:高率短時間放電タイプ
これらの放電タイプは、一般的には製造者が定める放電電流値(@25℃)により決定します。
S:0.125 It Aまで
E:0.5 It Aまで
M:3.5 It Aまで
H:3.5 It Aより大きい電流値
It Aは定格容量Cn(Ah)に基づき、下記の様に表現されます。
It A=C(Ah)/1(h)
IEC62620の直流内部抵抗測定は下記の条件で実施されます。
- 事前に電池のSOC*を50±10%に調整 (*SOC: State Of Charge 充電率)
- 周囲温度25℃±5℃
直流内部抵抗の測定は,単電池および電池システムに適用されます。
放電タイプ別に表1の放電電流値に従い測定を実施します。
表1. 直流内部抵抗測定時の放電電流値
放電電流 | 放電タイプ | |||
S | E | M | H | |
I1 | 1/5nIt A以上 | 0.04It A | 0.2It A | 1.0It A |
I2 | 1/nIt A以上 | 0.2It A以上 | 1.0It A以上 | 5.0It A以上 |
※nは定格容量を指定する際に使用する時間を単位とする基準値(時間率)を示します。単電池又は電池システムが放電タイプE、M及びHの場合nは5です。放電タイプSの電池システムの場合、nは8、10、20又は240のいずれかになります。
[直流内部抵抗測定]- 電流値I1で30秒間放電し、放電終了直前の電圧U1を測定する。
- 続けて電流値I2まで上昇させ、5秒間放電し、放電終了直前の電圧U2を測定する。
- 次式から直流内部抵抗Rdcを求める。 Rdc = ( U1 – U2 ) / ( I2 – I1 )
■ 【実験】 各条件における直流内部抵抗
IEC62620では表1.のように電池の特性を考慮し、電池の放電タイプごとに適した電流値を用いて測定を行いますが、今回は比較実験のため、同一のリチウムイオン電池サンプルを使用し、各放電タイプ(S,E,M,H)のそれぞれの電流値を用いて直流抵抗測定を実施しました。 図1は各SOCおよび各放電電流における、直流内部抵抗の測定値です。
[結果]図1. 各条件における直流内部抵抗 :Rdc:直列抵抗計算値[mΩ]、SOC:充電率[%] [試験条件]
- サンプル:リチウムイオン電池 定格容量 2.5Ah (円筒型) 放電タイプM
- 試験環境:25℃
- 各SOC(90%、50%、10%)に調整し直流内部抵抗測定を実施
IEC61620ではSOCを50±10%に調整するが、今回は比較実験のため、SOC 90%、SOC 50%、SOC 10%の条件にて直流抵抗測定を実施した。SOC10%の直流内部抵抗値は、 SOC 90%、およびSOC50%と比較して大幅に増大している。これは放電終止電圧付近では、電極表面への被膜成分や反応生成物が堆積するところで内部抵抗が増大するためである。
ケミトックスでは引き続き、様々な条件で内部抵抗値の測定を実施し、HP等でご紹介する予定です。
現在も、様々な電池の種類、未使用品と劣化した電池での比較などで実験を進めております。
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