電池を使用する中でプラス(+)、マイナス(-)を誤って逆に接続してしまう人為的ミスは避けることができません。二次電池は逆接続後に充電してしまうことで、電池を強制放電してしまう恐れがあります。さらにリチウムイオン電池は高エネルギー密度であることから発火・破裂により大きな事故につながる可能性があります。強制放電試験・過放電試験では各セルや電池ブロックを逆側に充電する、つまり強制的に放電して過放電状態にします。そして結果として試験体がどのような挙動を見せるか、その安全性を試験します。
◆市販バッテリーに対する試験例を公開
今回、リチウムイオン電池として代表的な18650電池を使用し、ユーザー自身が交換を行ったタイミングなどで極性を間違えてしまい、そのまま充電を行ってしまうとどのような結果になるかを評価しました。サンプルとしては、大手国内メーカーの3000mAhを超える大容量電池と、それと同等の容量を持つ安価な海外製品のサンプルの2種類に対し強制放電試験・過放電試験を実施しました。
まずは充放電性能についてですが、ともにカタログ値に対して100%の放電容量があり、十分な性能があることが確認できました。また、今回の強制放電試験・過放電試験はJIS C62133-2の条件を参照し、SOC 0%の状態から試験を開始し、その温度の推移を記録しました。
【試験条件】 (JIS C62133-2)
温度:20℃±5℃
充電状態:SOC 0%(放電終止電圧まで放電したサンプル)
放電電流:1.0 It A
終了条件:90分間。上限充電電圧の負の値に達した場合は電流値を減らす。

上限電圧の負の値に達することなく
電流は1.0 ItAのまま90分経過した

上限電圧の負の値(-4.2V)に達した。
その後、電流は流れなかった
【結果】
2検体どちらも発火、破裂は無く合格であった。
◆試験の推移について
試験結果としては、上記2検体はいずれも合格でしたが、それぞれの電池が示した挙動は異なっていました。
まず、温度については国内メーカー品が75℃程度であったのに対して、海外製品は87℃まで達したため、温度の面では海外製品のほうが熱暴走の危険性が高いと考えられます。
さらに、最高温度後の挙動にも大きな違いがありました。国内メーカー品は最高温度到達後も1.0 It Aが流れ続けますが、海外製品は最高温度到達後上限充電電圧の負の値に達し、その後は電流を流すことはできなくなり、90分後には室温に戻りました。
今回使用した国内メーカー品は保護基盤の有無は不明ですが、おそらくこれは搭載されておらず、強制放電に対して電流を遮断する機能はありませんが、電流印加状態でも安全な電池であったと言えます。一方で、海外製品は保護回路搭載の表記があり、最高温度のタイミングで作動していると考えられます。今回の比較のように、安全性試験に対する挙動は製品により異なります。使用する際には、これらを考慮の上、使用方法を検討する必要があります。
試験名 | 規格番号 | 条件 | 判定 |
リチウムイオン電池 |
UL 2580 | 保護機能が作動するデバイス定格の95%で放電する | 発火、爆発、ベントなどがないこと |
JIS C 8712 |
・SOC 0% |
発火又は破裂が |
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JIS C 8715-2 |
・SOC 0% |
発火又は破裂が |
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JIS C 62133-2 |
・SOC 0% |
発火又は破裂が |
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UN 38.3 |
・SOC 0% |
試験後7日間に 分解および発火が発生しないこと |
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IEC 62660-2 |
・SOC 0% ・1.0 It A ・90分 電圧、電流、温度を記録する |
セルの状態 (発火や破裂の有無)を記録する |
ケミトックスでは上記規格に準じた試験だけでなく特殊な条件での試験実施も可能です。様々なご要望条件でのご依頼を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
強制放電試験・過放電試験 装置試験装置 | |
最大電流 | 30 A |
構成 | 安全試験槽、バイポーラ電源、 データロガー、クランププローブ、 K熱電対、4Kカメラ |

お問い合わせ先
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