2021年4月28日、UL746Bが改訂され、従来のRTI(Relative Thermal Index、相対温度インデックス)に加え、IEC 60216に基づくTI(Temperature Index、温度インデックスあるいは温度指数)の取得が可能になりました。

RTIは、UL746Bに基づく温度インデックスであり、RelativeのRが付くことから、相対温度インデックスとも呼ばれています。一方TIは、IEC60216に基づく温度インデックスです。RTIとTIはどちらも温度インデックスであり、材料を一定温度に放置した場合の特性を表す指標です。数年前よりULの規格策定会議(STP)や実際の諮問機関である長期熱劣化試験フォーラム(LTTA Forum)にて議論された結果、2021年4月28日にUL746Bが改訂され、従来のRTIに加えて、IEC60216に基づくTIが、UL746Bに含まれました。

TIの評価方法は、RTIと似ていますが、IEC60216に詳細な記載があるように、少しずつ異なります。最も大きな違いは、コントロールを使用しないことです。すでに温度インデックスを保有する材料で、温度インデックスを求めるために試験する材料とともに試験する材料のことをコントロールと呼びます。RTIでは原則コントロールを使用しますが、TIではコントロールを使いません。その結果、温度インデックスの算出に用いる相関時間は、RTIでは5000~60000時間と幅を持ちますが、TIでは原則20000時間と固定されています。

  RTI TI
適用規格 UL746B UL746BにIEC 60216の一部導入
オーブン ASTM D5423に基づく 本来IEC 60216-4に基づくがASTM法も可
コントロール材料 原則あり なし
相関時間 5000~60000時間(コントロールなしの場合60000時間) 原則20000時間
寿命評価 算出方法 基本3次方程式の解 時間の対数グラフにて、選択したセットの近似直線の解
分析 F検定
温度評価 温度数 4温度以上 3温度以上
有効な寿命 500時間以上 100時間以上
分析 F検定カイ二乗検定 下限95%信頼限界TCで最終TI決定
制限 最低温度-TI<=25℃が必要

相関時間に幅を持つRTIでは、評価した材料(キャンディデート)の結果だけでなく、一緒に評価したコントロールの結果にも左右されることになります。そのため、”RTIは熱劣化特性を忠実に反映しているとは言い切れない。”と指摘される場合があります。一方コントロールを用いないTIでは、得られた結果にブレが発生しません。部品や最終製品の設計において、ブレがなく使いやすいTIが、今後有力な温度インデックスとして見直されるでしょう。

キャンディデートの結果(4温度の寿命)は同じでも、相関時間により異なる温度インデックスとなる例 (RTIではコントロールの結果次第で①~②のRTIの幅を持つことが示されている。)
①コントロール有りで相関時間5000時間の場合(RTI) ②コントロール有りで相関時間60000時間の場合(RTI)
③コントロール無しで相関時間20000時間の場合(TI)

ケミトックスでは、ULのDAP(データアクセプタンスプログラム)の認定を取得しておりますので、RTI取得のための試験が可能です。TIについては早急にDAPの認定取得を目指しておりますが、現時点でもTI取得のための試験は可能となっております。

UL主催のLTTA Forumにて、TIの算出方法について現時点でも詰めの議論がされており、RTIの要求事項との整合性が得られるように、規格の詳細な取り決めを現在策定しています。最初は既にRTIを取得済みの材料について、RTIを算出した試験データを元に、TIを算出していくことから評価が開始されるものと予想しています。LTTA Forumには弊社メンバーも参加しており、常に最新の情報を得るようにしております。TIの運用については、皆様に与える影響は大きなものとなると考えられますので今後も動向を注視し、適宜お客様へ情報発信を行ってまいります。

長期熱劣化試験TIの取得